自分でできる認知行動療法4ステップで過敏性腸症候群を軽くしよう!
『認知行動療法』では
- 身体の緊張をやわらげる
- ものの受け取り方や見方をかえることでストレスを軽くする
という2つの効果が期待できます。
過敏性腸症候群においては、この2つの効果によって
- 緊張状態からくる腹痛を起こりにくくなる
- 腹痛の原因となるストレスを感じにくくなる
という状態になります。
個人差はあると思いますが、わたし的には、この認知行動療法が過敏性腸症候群を治すために一番効いたな、と思っています。
あくまで『わたし流』なので、病院で受ける本格的なものほどの効果は見込めないと思いますが、お役に立てると幸いです。
もくじ
腹痛がおきるパターンを把握する
どのようなタイミングで腹痛が起きているのかをしばらく観察しましょう。
こうすることで、自分の腹痛パターンがわかるので、過敏性腸症候群に対して対策を立てやすくなります。
ちょっとめんどくさいですが、できればメモに残しておきたいです。
観察する内容としては
- いつ
- 何をした時に
- どんな気持ち・状態
- 何が起きたのか
といったことです。
よくあるのが『電車に乗ったらお腹が痛くなる』というパターンです。
この場合は、
・○月○日(朝)
・電車に乗ってしばらくしてから
・電車に乗る前から不安だった。お腹が痛くなったらどうしようと思っていた。
・実際にお腹が痛くなった。トイレに駆け込んだら案の定下痢。薬を飲んでなんとか会社に間に合った。
という感じです。
『起きている間中ずっと腹痛』の人の場合なら
・○月○日
・朝起きてからずっと
・痛みに波がある。ずっと不安でお腹が痛くなることが怖い。
・じょじょにお腹のグルグルする感じが強まってきて下痢になった。下痢をした後はお腹の痛みが弱まるけどしばらくするとまた痛くなる。今日は10回下痢でトイレに行った
という感じです。
この『腹痛パターン』を集めることで、過敏性腸症候群を治すための方法において「自分にとって何が一番効果的か」ということがわかるようになります。
ここで、特定の何かを食べた後に腹痛を起こしている場合は『食物』が関係していることがわかりますし、不安な気持ちから腹痛を起こしているようなら『ストレス』であることがわかります。
こころとカラダをリラックスさせる方法を学ぶ
腹痛パターンのメモをしつつ、さっそく心と身体の緊張を軽くしていきましょう。
過敏性腸症候群の症状は、緊張や不安から引き起こされることが多いので、リラックスすることで症状はだいぶ楽になります。
呼吸法で神経システムにブレーキをかける
ほとんどの人は、ふだん胸呼吸をしています。
胸呼吸は、心臓・胃・腸をコントロールする神経ネットワークを刺激するので、胸呼吸をおこなっていると神経が過敏になりやすいです。
なので、胸呼吸を『腹式呼吸』に変えていきましょう。
腹式呼吸は、
- 血圧を下げる
- 心拍数を下げる
- 血液と酸素の供給を増やす
- リラックス状態になる
- エンドルフィンが分泌され気持ちが楽になる
といった効果があります。
また、腹式呼吸によって分泌されるエンドルフィンは、身体の痛みをやわらげてくれるありがたい物質です!
腹式呼吸のやり方
- ベッドや床にあおむけに寝る
- 左手を『胸』に右手を『おへその下』にあてる
- 息を歯の隙間からゆっくりとぜんぶ吐き出す
- 自然に鼻から息を吸う
この方法を試すと、『胸ではなく、おへその下が動いている』ことがわかると思います。
これが腹式呼吸です。
慣れてくると、座った状態でも立った状態でも腹式呼吸ができるようになります。
1回10分を1日2,3回おこなってください。
筋肉をゆるませて痛みを感じる脳の活動をおさえる
緊張して身体がキュッとなると腹痛になりやすいです。
これは筋肉から脳に伝わる神経刺激が多くなるからです。
逆に身体の緊張をとくことができれば、神経刺激が少なくなり、痛みや消化管の知覚をつかさどっている脳の活動をおさえることができます。
筋肉をカンタンにゆるませる方法
- ベッドや床に寝る
- 一度全身にグッと力を入れる
- 10秒ほどキープ
- スッと脱力する
一度力をいれることで、かんたんに筋肉をゆるませることができます。
なんとなく筋肉をゆるませる方法がわかったら、右手だけ、右足だけ、背中だけ、顔だけ、というふうに部分別で、力を入れる→脱力させるをおこなってみてください。
部位別にリラックスしている感覚がわかるようになってくると、普段どれだけ自分の身体が緊張しているかがわかるようになり、ちょっとの緊張に対してでも、かんたんに筋肉をゆるませることができるようになります。
こちらは、1日3回ほど全身の筋肉をリラックスさせてください。
イメージをしてリラックス状態を体感する
- 楽な体勢でベッドに横になる
- 目をつむる
- ゆったりと呼吸をする(できれば腹式呼吸)
- リラックスできる場所を思い浮かべる(海や山など好きな場所を)
- 波の音や潮のかおり、日差しの暖かさなど細かい部分をイメージする
- 好きなだけリラックスした状態を体感する
脳をリラックスさせれば、身体も勝手にリラックスしていきます。
脳や身体は「実際に起こっていること」と「ただ想像しているだけのこと」を区別できません。
脳が不安な想像でいっぱいになれば身体は腹痛のような症状を起こします。
逆に脳が穏やかな想像でいっぱいになれば、身体もリラックスします。
スマホなどでイメージしている場所にあった音楽をかけると、よりリラックスしやすくなります。
どこでもリラックスできるようにする
- 腹式呼吸
- 筋肉の緊張をとく方法
- イメージによるリラックス
がわかるようになってきたら、どこでもリラックスできるように意識していきましょう。
授業中や仕事中、電車に乗っている時などにフッとリラックス状態に入ってみましょう。
最初は難しいかも知れませんが慣れてくれば楽に心を落ち着かせられるようになります。
『自動思考』を変える方法を学ぶ
精神的な緊張をほぐすためには『自動思考』を変えることです。
自動思考というのは、習慣になってしまっている考え方のことです。
過敏性腸症候群の人は、この自動思考が今は「心配ごとばかり考える状態」になってしまっている可能性が高いです。
心配ごとのある時、脳内の科学的変化によって身体の痛みはひどくなります。
なので何でもかんでも心配してしまう考え方の癖を変えることが過敏性腸症候群の改善につながることになります。
心配には2つある
心配には大きくわけて
- 良い心配
- 悪い心配
の2つがあります。
良い心配とは、『心配することで何か解決できる心配』
悪い心配とは、『すでに起こったことに対する心配』『まだ起こっていないことへの心配』
です。
電車での腹痛を例にしましょう。
『良い心配』は、
「お腹が痛くなったら心配だから、薬を持っておこう」
「お腹が痛くなったら心配だから、トイレの場所を把握しておこう」
というものです。
『悪い心配』は、
「(お腹が痛い時に)もし、朝ごはんを食べなかったらお腹が痛くならなかったかもしれない」
「もしかしたら、電車の中で漏らしてしまうかもしれない」
「またお腹が痛くなったらどうしよう」
といったものです。
悪い心配はしたところでなんの解決にもならない上、腹痛を起こしやすい状態にしてしまうことを心に刻みつけましょう。
最悪の事態ばかり考えない
『悪い心配はするだけムダ』ということがわかったところで、どうすれば理想的な考え方に持っていけるのかを知りましょう。
簡単にいうと、最悪の事態ばかり考えないことです。
- 色んな考え方をしてみる
- いま、この瞬間に集中する
- 他の人の視点に立って自分のことを見てみる
この3つを実行することで、心配ばかりしてしまう自動思考から抜け出せるようになります。
「電車に乗ったらお腹が痛くなる」という自動思考に陥っている場合を例にしましょう。
この考えになる人は、何度も電車でお腹が痛くなる思いをしてきたのだと思います。
だから「電車に乗る=お腹が痛くなる」という考え方になってしまっています。
しかし「電車に乗る=お腹が痛くなる」というのは絶対的なことではありません。
- お腹が痛くならないこともあったから、痛くならないかも知れない
- 小さい時はふつうに乗れていたのだから大丈夫かもしれない
こういったいろんな可能性・考え方ができます。
また、「お腹が痛くなるかも」という考えをする必要は本当はどこにもないのです。
「今」痛くなければそれまでなのです。
わかりもしない未来を思い悩んでも何も解決しません。
こういった時は自分を客観的に見て、アドバイスをしてあげると気持ちが落ち着きやすく、悪い考え方から抜け出しやすくなります。
「電車に乗ったらお腹が痛くなるかも」と不安がっている友達がいたら、なんと声をかけますか?
「考えても仕方ないよ」
「乗ってみて、痛くなったら降りよう」
「いま痛いなら無理せず休んだ方がいいんじゃない?」
こういった声をかけるのではないでしょうか?
それが客観的な冷静な考え方なのです。
これができるようになると、不安に押しつぶされて腹痛になってしまうことが減って行きます。
起こったことに対して大げさに考えない
ただ、実際に起こって欲しくないことが起こってしまうこともあるかと思います。
さきほどの例でいえば「本当に電車でお腹が痛くなってしまった」場合です。
こういった時は、起こったことに対して大げさに考えないことです。
起こったことをありのまま受け止めるのです。
今起こっていることは「腹痛」です。
このときに
「このままだと遅刻してしまう」
「こんなに遅刻が続いていたらクビになるかも」
「こんなことが一生続くなら死んでしまった方が楽だ」
こういったことを考える必要はありません。
「今」起こっている事実にだけ目を向け自分が今、本当は何ををすべきなのかをハッキリさせましょう。
電車の中で腹痛が起こっているのなら今は腹式呼吸で痛みをやわらげ、次の駅でトイレに行くことです。
「今」やるべきはそれだけです。
あれもこれもと思い悩んでも仕方ありません。
とりあえず「今」やるべきことだけに対処しましょう。
問題に対する上手な対処法を知る
少し前にお話しした通り、過敏性腸症候群が悪化する人の多くが心配性です。
この心配性を解消するためには、起こった問題に対する上手な対処法である
- 問題焦点法
- 情動焦点法
の2つを知り、実際に取り入れていくことが大切です。
問題焦点法とは
問題焦点法とは「問題そのものに立ち向かっていく」方法です。
かんたんに言うと、やれることをパッとやってしまう、ということです。
たとえば「自分は病気かも知れない」と心配している状況だとしましょう。
この時できることは
病院に行って検査をする
これ一択です。
思い悩んでしまうとストレスが増えてしまうだけです。
なので、立ち向かえる問題なのであれば、できることをパッとやってしまい心配ごとをなくしてしまうのが一番です。
これは小さい心配ごとにも使えます。
たとえば、「テストで悪い点をとったらどうしよう」という心配をしている時は、今できる限りの勉強をすることです。
心配をしても何もはじまらないので、できることがあるのなら思い悩む前に行動を起こそう、そうすることでムダなストレスを溜めにくくする。
それが、問題焦点法です。
情動焦点法とは
情動焦点法とは「思い悩んでも仕方ないと受け入れ、問題から離れる」方法です。
かんたんに言うと、どうにもできないことは、考えても仕方ない、と受け入れることです。
これは自分ではどうしようもない問題にぶちあたった時に使えます。
たとえば、先ほどの例と同じで「病気かも知れない」と思い悩んでいるとしましょう。
この時、病院に行って検査をした後、結果が返ってくるまでは自分にできることは何もありません。
「検査結果がヒドイものだったらどうしよう」
と思い悩んだところで、実際の検査結果が返ってくるまで対策は立てれませんし、思い悩んだからといって病気が治るわけでもありません。
思い悩んだところでストレスがたまってしまうだけです。
なので、こういう時は「悩んだってしょうがない」と問題を手放してしまいましょう。
- 自分の好きなことに打ち込む
- 考えても仕方ないと放っておく
- その時はその時と達観した視点を持つ
ことで、悩みから解放されましょう。
特に自分の好きなことに打ち込むことはおすすめです。
ひとつのことに集中しているとき、人は他のことを考えられなくなります。
最初のうちは、考えても仕方がないと頭でわかっていても、どうしても気持ちが「心配ごと」に向いてしまいやすいです。
なので、好きなことに打ち込んでみてください。
そうやって情動焦点法を実践しているうちに
「あ、自分が考えているより最悪なことは起こらないんだな」
「結構なんとかなるもんだな」
ということが分かり、少しずつ問題の対処の仕方が良い感じにできるようになっていきます。
上手に『問題焦点法』と『情動焦点法』を使いこなそう!
- 問題をパッと解決してしまう『問題焦点法』
- 思い悩んでも仕方ない、と受け入れる『情動焦点法』
どちらか一方が優れているというわけではないので、状況に応じて使い分けましょう!
ポイントは、心配ごとや不安がある時に「この問題は解決できる問題なのか?」を考えてみることです。
解決できることなら、パッと行動に移り解決してしまう。
解決できないことなら、考えてもしょうがない、と思考を手放す。
慣れてくるとそれこそ自分で考えなくとも瞬時に振り分けることができるようになります!
心配ごとで頭を埋め尽くされてしまう時は「この問題は解決できる問題なのか?」を自分に問いかけてみましょう!
こうすることで、過敏性腸症候群の人が陥りがちな『自動思考』である「心配ごとばかり考える状態」から抜け出せるようになります。
IBSの人が抱えがちな思い込みをなくす
最後に、心を軽くするために過敏性腸症候群の人が抱えこみがちな『信念』について知っておきましょう。
そもそも自動思考が「心配ごとばかり考える状態」になってしまうのはこの信念が原因である可能性が高いです。
過敏性腸症候群の人が抱えがちな信念は、大きく分けて
- 頑張れば完璧な状態になれる
- 自分が頑張ればなんとかなる
の2つです。
完璧な自分でないと認められないという思い込み
治すために知っておきたい!過敏性腸症候群の原因とIBSの症状が続く理由でお伝えした通り、過敏性腸症候群の人は『完璧主義』な人が多いです。
いつでも人よりできる自分でないと嫌だという気持ちが強く、何事に対しても
「これぐらいじゃダメだ」
「失敗を絶対にしたくない」
「完璧な自分でないと意味がない」
「失敗したら他人から笑われる」
「完璧な自分じゃないと周りから認められない」
という考え方をします。
その結果、いろんなことに対して「完璧にやり遂げられなかった場合」を考えすぎてしまい自動思考が「心配ごと」に向いてしまうのです。
あなたは普通以上に頑張っている
完璧でないとダメ、という思考を軽減するためには、
- 自分にとってそれが本当に重要か?
- 失敗した場合に周りは本当にあなたを笑うのか?
- 自分に厳しくなりすぎていないか?
を見つめ直すことです。
完璧主義自体は悪いことではありません。
しかし、完璧主義の度が過ぎてしまい「多くのことに対して完璧主義じゃないと気がすまない」という状態になってしまうと、不安やストレスが高まり、過敏性腸症候群の症状が悪化してしまいます。
自分にとって、それを完璧にこなすことで何が得られるのか、身体を壊してまで手にいれる価値のあるものなのか、を見つめ直してみましょう。
自分が頑張ればなんとかなるという思い込み
過敏性腸症候群の人で、人から頼られることが多い人はこの思い込みが強い可能性があります。
なにごとに対しても責任を感じてしまい、人の問題でも相談されたり、他人の悩みに気づいた段階で「自分はこの問題を解決しなければならない」という思考に陥ります。
また「自分が頑張れば解決できる」という気持ちになります。
分かりやすい言い方をすれば「責任感が強い」と言えます。
しかし、この責任感の強さが過敏性腸症候群の悪化につながっているのです。
自分に関係ないことまで背負う必要はない
もちろん、責任感が強いことは悪いことではありません。
しかし、先ほどお伝えした通り、多くの人は「自分は完璧でなくてはいけない」という気持ちが強いので、他人の問題に対しても100%以上の力を発揮しようとします。
中には他人の問題だからこそ100%以上の力で頑張らなくては、と思っている人もいるでしょう。
ですが、他人の問題に対してできることは限られています。
それは結果的に他人の期待に応えられなかったストレスにさらされることを示しています。
また、他人の問題に対しても「心配」してしまうので、自動思考はより「心配ごと」に向きやすくなります。
他人の問題に対して、責任を感じる必要はありません。
それに、必要以上の手助けは相手の成長をさまたげてしまいます。
他人の問題に対してがんばりすぎてしまうと、
- 相手は自分の成長のチャンスを逃す
- 自分はストレスを抱える
ことになってしまうので、お互いにとって良い結果とはなりません。
手助けをしてあげる時も自分のムリのない範囲で行うことが大切です。
心が軽くなれば過敏性腸症候群も軽くなりやすい
- 完璧でいる必要はない
- 人のことまで背負いこむ必要はない
この2つをしっかりと心に刻むことができれば、おのずと心配ごとも減って行くので、自動思考が心配ごとに向きにくくなります。
そうすると結果的に、過敏性腸症候群の症状も出づらくなるのです。
すっごくカンタンにまとめると、『ゆる~~く生きる』ことです。
認知行動療法の基本がわかった人へ!
認知行動療法の基本としては
- 腹式呼吸をする
- 筋肉をゆるませる
- リラックスをイメージする
- 心配ごとばかり考えない
- 問題焦点法と情動焦点法を使って問題に対処する
- 完璧主義をゆるくする
- 自分が頑張ればなんとかなるという思い込みをなくす
ことです。
ただ、なるべくわかりやすく書いてはいますが、全体的に抽象的で頭ではわかっていても実際に行動にうつすことが難しいかと思います。
わたしの体験談と治し方は、日常生活の中でとても実践しやすい感じで書いているので、一緒に見て頂けるとうれしいです!
